「最後までやり抜け」という親の呪縛 弁護士志望の僕が就活を始めた訳

 

あなたが小さかった頃、両親からよくこんな言葉をかけられませんでしたか?「一度決めたことは最後までやり抜きなさい」無意識のうちに「進路を変えること」=「悪いこと」と思ってしまう人も多いのではないでしょうか。 今回は旧帝大学の法学部に進学し弁護士を目指すためロースクールに合格した後、一年間休学し就活をはじめた山本(仮名)さんに話を聞きました。

「とにかくトップを目指せ」という親の呪縛

ー今回は「一度決めた進路を曲げる覚悟」についてお話を伺えればと思います。まず、山本さんがどんな学生だったか教えていただいてもいいですか?

山本幼少期はいわゆる「英才教育」を受けていました。特に、習っていたピアノと勉強に関しては厳しかったですね。その影響もあって、自分に対しても相手に対してもとにかくストイックで、常に学級委員長としてリーダーを張っていました。両親から一番怒られたのは「嘘をついたとき」で筋を通せとよく言われていました。また中学は絶対に私立に行けと言われ必死に中学受験勉強をしたことを覚えています。

 

ーすごい、いわゆる「エリート」ですね。

山本:いやいや、それがそんなこともなくて(笑)。10歳の時転校先の学校ではしょっちゅうトラブルを起こしていました。身体が大きく、勉強もスポーツもできたため悪口をよく言われていました。そして悪口に対して真っ向からぶつかり手をだしてしまうことが多かったですね。「影で悪口を言う」ことほど耐えれないことはなかったです。

山本:そこから、なめられないためには圧倒的に力をつけることが必要だと考えるようになり、がむしゃらに勉強を頑張りました。中学入学当初は普通科に在籍していたのですが、偏差値70以上の進学コースに転部しました。そこから5年間、朝から晩まで勉強漬けの毎日でした。その苦労もあってか、念願の国立大学の法学部に現役合格できました。

 

ロースクール入学後に揺らぎ始めて

ー国立の法学部を目指したのはなぜですか?

山本:家庭の教育方針が「18歳になったら家をでる」「大学は国公立史上主義」であったため、必然的に地方の国公立を選ぶ必要がありました。法学部を選んだ理由は2つあります。1つは叔父が弁護士であったこと。単純に憧れの存在でした。もう1つは、文系の中でTOPを目指したかったからです。幼少期の経験から一番であることを良しとしてきたため、文系科目の中で一番偏差値が高い地方国公立の学部を受験し、無事合格することができました。

 

ー大学入学後はどのように過ごしていましたか?

山本:大学1年生からバイトやサークルに入りつつ、弁護士になるための勉強を欠かさずに続けていました。毎日、1講義あたり1時間の予習と復習は必ずやっていました。大学3年生の10月から翌年の弁護士予備試験に向けて本格的に勉強を開始しました。朝9時に大学の図書館に行き、22時まで勉強する日々を約1年間続けました。

努力の甲斐あってか無事、早稲田大学のロースクールに合格することができました。

 

ーロースクール合格後は晴れて弁護士の道に?

山本:いや、それが結論から言うとロースクールには行きませんでした(笑)

1年間勉強をしてみて抱いた感想は「しんどい」でした。このような生活をあと2年間続けていいのか?と思うようになりました。ただ、合格発表直後は弁護士というステータスへの欲望もあったし、両親から「一度決めたことはやり通せ」と教育されていたので、とても葛藤しました。自分が本当にやりたいことではないことを続けるか続けないか、とても悩みました。

 

「変える決断」を教えてくれたエンカレッジ

ーそんな中、休学して就活を始めたきっかけはなんでしたか?

山本:試験終了後、科の同期で就活を終えた方や社会人の方含め50人以上の人に相談にのってもらいました。いろいろな人と話して考え方のバリエーションは増えたものの、自分がしたいことをまとめられず不安になっていました。そんな時に出会ったのがキャリア教育支援NPO en-courage(エンカレッジ)のメンターでした。

 

山本:メンターから自分の人生を幼少期から今まですべて洗いざらい話すように言われ話しました。その中で、「君のターニングポイントはここやここだからいまこういった点で迷ってるんじゃない?」と核心をつく発言をもらい、自分がどういった意思決定をしてきたか整理することができました。他に相談した人は自身の体験談を語ってくれることが多かったですが、メンターはまず話を聞いてくれるというのが印象的でした。メンターとの面談をきっかけに自分がとるべき意思決定が明確になりました。

 

ーなるほど、両親からの反対はなかったのですか?

山本:最初にロースクールに進学せず就活をすることを話したときはめちゃくちゃ怒られました。「一度決めたことは最後までやり通せ」と。とりあえず院に進んでから就活すれば?とも言われました。ただ、自分がやりたいことそしてやる理由を明確にしてそれをちゃんと伝えると納得してくれました。今、振り返るとメンターとの面談で自分の意思決定基準を明確にできていたことが大きかったと思います。

 

ーありがとうございます。最後に全国の就活生へ伝えたいことはありますか?

山本:僕にとって就活は弁護士という道を、自分の意志を「変える」決断でした。就活では自分にあった企業をどう選ぶか、自分をいかに「貫くか」という点のみに目がいきがちですが、僕は選ぶのと同じくらい「変える」決断も重要だと学びました。しかし、僕たちは「貫く」ことをよしとした環境で生きていると思います。自分が「変える」決断をとるとき、一人で抱え込むのではなく、周りの人に話してみて客観的に評価してもらうこと。これが後悔ない選択をする上で大事なことだと思ってます。