熱血理系学生がなぜ急に就職を決めるのか

 

院生としての進路を考えていた理系学生がなぜ急に文系就職をすることに決めたのか。『理系キャリア』をテーマに、自身の考え方の変化とその契機について語っていただくインタビュー企画。今回は地方旧帝大で農学の研究をしている、田中さん(仮名)にご協力をもらい、じっくり語っていただきました。

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もともと描いていた人生と就活のこと

-今回はインタビューにご協力くださりありがとうございます。早速ですが、田中さん(以下、田中)が現在描いているキャリアプランについてお伺いさせてください。

田中:広告を中心に事業開発を行なっているベンチャー企業に内定を承諾しました。将来的には農業において生産者と消費者をマッチングするビジネスをやっていきたいと考えております。
-そうなんですね。世間が抱く「理系院生のキャリアイメージ」とは全然違うような印象です。もともと田中さんが大学で現在、専攻されているのはどんな学問だったんでしょうか。

田中:農学、特に植物の遺伝子の研究をしています。
どうやったら栄養価を上げ美味しい野菜を作れるのか、などを日々研究していますね。

 

-そのような学問を研究したいと思ったきっかけ、そして、大学入学当初のキャリアプランについて教えてください。

田中:実はきっかけは小学校まで遡ります。クラスで農業実習がありました。好き放題に畑で1年間かけてきゅうりを育てるという内容で、本当に面白かったですね。窒素やリンなど肥料の成分をいじってみたり、土に入れるためにクラスでミミズを飼ってみたり、小学生なりにできる限りのことを頑張っていました。
もともと食にはお金を惜しまないという家庭環境だったためか、熱中しましたね。
そして収穫の時。このきゅうりが本当に美味しかった。

どうしてこんなに美味しいんだろう、というのを考えた時に、「自分で工夫し、試行錯誤をしたこと」が重要だと思いました。
そのときからですね。もっと研究してみたい、と考えたのは。
そこで、農業やるならここでしょ、といまの大学を選びました。

伝統がすごくあるんですよね。

 

-確かにそのイメージが強いですね。実際に大学に入って見てどんな部分が期待していたことと一致していて、どんな部分がギャップでしたか。

田中:研究施設や環境は抜群でした。普通は学部3〜4年生で研究するのですが、2年生のとき教授に頼んでみたところすぐに研究できました。
やる気次第でそういったことに挑戦できるのは期待以上でした。

あとは、誇りを持っている教授が多かったように思います。
そういった方って、意欲のある子に対して手伝ってくれることが多くて。
本当にいい大学ですね。
逆にギャップとしては大きく二つあります。

一つは、学部で勉強する内容のギャップです。先ほど申し上げた通り、自発的にやれば違いますが、思ってたよりも座学が多かったです。
もう一つは研究のギャップです。大学4年生の最初に論文ができましたが、そこでは「論文を書くことがゴールになっている」という印象を受けました。

論文は、ゴール地点ではなく、スタート地点だと思う僕としては少し違和感でした。
-企業大学共同の、いわゆるオープンイノベーションなどはなかったのでしょうか。

うーん、なくはないですが少し閉鎖的だった印象ですね。

キャリアの転機になったこと

-そういった考えから現在の就活に繋がっていくわけなのですが、どんなきっかけがありましたか。

田中:先ほど申し上げた通り、僕の感じた違和感は、基礎研究が大事にされすぎていることでした。
例えば遺伝子を見つけることがゴールになっていて、その先の「遺伝子を持つ品種を量産化に繋げる」など、そういう実用的な部分が無かったことです。

その頃、学部の先輩がen-courageを使っていて、イベントに来てみない?と言われたことが就活を始めるきっかけになりました。ベンチャー企業というものに初めて触れてすごく触発されました。
そこで学部4年生の春休みに外資系コンサルティングのインターンに行きました。
いろんな方にお会いして、東京にいる学生の就活の軸がしっかり固まっていることに衝撃を受けました。
みんな19卒だと思っていて、同世代でこんなに差があるのかと。後で知ったのですが、ほんとはみなさん18卒だったという笑
ただそのときから、将来やりたいこと、働く上に大事にしたことは何かなどを深く考えるようになりました。
-そうした考えの変化について家族や友人、企業など、周囲はどのように反応していましたか。
田中:親は特に何も言いませんでしたね。へえ、そうなんだ、くらいです。
本人がやりたいことを自由にやらせる方針です。大学を選んだ時もそうでしたね。
教授も、すごく反対されるわけではなかったです。
ただ、研究室内で自分しかできない研究があり、それの引き継ぎに関してはしっかりやりなさいと言ってくださいました。
みんなに応援されました。
だからこそ自分の決断に対して正解にしたいという思いが強いですね。

実際に就活を始めてみて

-選考や説明会、企業に出会う中で印象深い出来事や、自分自身の考え方の変化などがあれば教えてください。
田中:あるベンチャー企業のサマーインターンで受けたフィードバックは印象に残っています。
「確かに発言できているし、チームをひっぱっていて、リーダーなんだろうけど、君がチームを間違った方向に進めているよ」
組織で働くとはどういうことなのかを考えるようになりました。振り返ってみれば、いままでの人生は、個人で何かを達成することが多くて、チームで何かを達成することは少なかったなあ、と。学問などは結構典型的ですよね。
いろいろインターンを経験する中で、リーダー像が変わりました。
スーパーマンみたいな人がリーダーだと思っていましたが、そうではなくて、リーダーが仕事をしなくても、回るようなチームできるリーダーが理想なんだろうなと。
そのときをきっかけに、結局将来事業をやりたくなったときに人に頼る力、頼られる力を身につけようと思いました。
では人に頼る力が求められる環境というのはなんだろう、と。
それは自分ができる範囲の仕事を任されるのではなく、例えば自分のキャパシティが100なら、常に120~150の仕事をつかめる環境なのではないか、と思うようになりました。
-内定先はどのように意思決定しましたか。

田中:インターンからしか内定を出さないベンチャー企業に承諾しました。
実は、インターンの時にはメンターの方にボロボロにフィードバックされて、内定自体はもらえなかったんです。笑
「成長したと思ったら連絡してこい」
「インターンやいろんな人との面談などを経て、リーダーに関しての考え方が変わって聞いて欲しい、と思ったら連絡しろ」
なんて言われました。当初は、絶対に連絡してやるもんか、と思ってましたが、先ほど申し上げたように考え方が変わりました。
連絡したところ、「役員と話してみようか」と言われ
僕・メンター・役員の三人で、面談になりました。
面談の終わりに、役員の方がメンターの方に対して

「田中を採用してお前に活躍させられる自信があるのか」と聞きました。

「自信があります」

力強く答えてくださいました。

嬉しく思ったのはもちろんですが、採用という意思決定を一社員に任せている、裁量権をちゃんと渡していることも踏まえて、より一層志望度が高まりました。

理系の後輩に伝えたいこと

-最後になりましたが、院進するか就活をするかで悩んでいる理系の後輩につたえたいことを教えてください。

田中:できるだけ視野を広く持って欲しいと思います。
研究するなら研究でもいいと思うし、就活するなら、就活でもいいと思うし。
ただ、固定概念を持たずに、ちゃんと理由を持って決断していって欲しいな、と。
周りがこうだ、とか、常識的にこうだ、ではなく、自分の意志に委ねてほしいと僕自身は考えています。
-田中さん、長い時間インタビューありがとうございました!

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