「給料」についてマクロ視点から考える

 

就活生なら給料を気にしておられる方も多いかと思います。四季報で給料を見比べたりしたこともあると思いますが、数字のみにとらわれてしまうのは危険性もあると思います。その数字は、今を切り取った「写真」のようなものであって、本当に大事なのは、あなたがこれから入社して働く40年間だからです。逆に、現在の大企業の40年前を想像してみてください。トヨタもSONYもまだ若い会社でした。Googleなんて存在もしていませんでした。もちろん、これから将来どうなるのかなんてわかりませんが、ある程度予測可能するためにマクロな視点から考えることが重要だと思います。「大企業に入れば一生安泰だ」と結論付けてしまう前に、一度読んでみてください。

1. そもそも給料はどこから生まれてくるのか。

1-1. その前に、会計用語の復習から

これからお金の話をしていくので、会計の用語に不安がある方は少しお付き合いください。ご存じの方は読み飛ばしていただいて構いません。

「利益」といえば「利益 = 売上 - コスト」の基本方程式ですが、実は利益には5種類あります。これらは損益計算書(PL)という財務諸表に出てきます。

① 売上総利益(粗利)= 売上高 - 売上原価(仕入高)

② 営業利益 = 粗利 - 販売費・一般管理費(人件費・オフィス家賃など)

③ 経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用

④ 税引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 - 特別損失

⑤ 当期純利益 = 税引前当期純利益 - 法人税等

図にすると以下のようになります。

図1 5つの利益

 

ちなみに日本の法人税率は約30%で、世界では7番目の高さです[出典1]。法人税率が極端に低い国ではタックスヘイブンが問題になりましたね。

当期純利益は、会社の資本(純資産)増加分になります。ここから、株主への配当、再投資、内部留保(貯金)に振り分けていきます。当期純利益の中から、どれだけ株主へ配当しているかの割合を「配当性向」といい、日本では平均30% 弱です[出典2]

1-2. 一人あたりの「粗利」から給料は生まれる

さて、上の図で販売費・一般管理費を赤くしたのには理由があります。この部分には人件費、つまり、あなた方の給料が含まれるからです。ここからわかることは、売上総利益(粗利)から給料が生まれているということです。特に一人あたりの粗利が、給料に大きな影響を与えます。人件費を粗利で割った割合を「労働分配率」と呼びます。経営者からすると50%以下が良好で、70%を超えると良くないそうです[出典3]。また、給料と売上の関係で言うと「自分がもらう給料の3倍は売上に貢献しないと一人前ではない」と一般的に言われたりします。

2. 高い給料を払える会社とは。

2-1. 儲かっている会社、少数精鋭の会社、若い会社

一人あたりの粗利が多い会社が、高い給料を払える可能性が高いということがわかりました。それでは、どのような会社がそれに該当するのでしょうか。筆者は次の3つだと考えています。

① 儲かっている会社

当然ですが、景気のいい会社は売上高・粗利が大きいので、高い給料を払う力がありそうです。成長している会社は給料も伸びていきそうです。赤字を出しているようでは、そんな余裕はありません。

② 少数精鋭の会社

社員の数が少ないと、一人あたりの粗利は大きくなります。いわゆる少数精鋭の会社は、高い給料をもらえるポテンシャルがありそうです。ただし、その分一人あたりの仕事に求められる量と質も高いでしょう。

③ 若い会社

これは一概には言えませんが、部長、役員といった偉い人が多くいる大企業では、彼らへの報酬が高くつきます。日本ではおおよそ年功序列で給料が決まる傾向がありますから、みなさんのような若い人は相対的に給料は低くなってしまいます。若い人が多い会社だと、あなたの相対的な取り分も増えるでしょう。

2-2. 「内需縮小」という宿命への対応に注目!

特に日系大手を目指している場合に注目してほしいのが、「内需縮小」という課題にどう立ち向かおうとしているかという点です。ご存知の通り、日本の人口減少・少子高齢化によって内需が縮小する時代に突入しました[出典4]。これはほとんどすべての企業に影響します。特に、新しい産業に取り組んでいるベンチャー企業よりも、現在内需に支えられている大企業の方が大きく影響を受けると思います。「利益 = 売上 - コスト」の方程式において、何もしないと売上が減ってしまうのですから由々しき事態です。ここで、利益を守るために、2つの戦略があると考えられます。

① 戦略1:売上を増やす

当然と言えば当然です。既存の事業・製品だけだと需要が減っていくので、新しい製品や事業の開発をしたり、海外に販路を求めに行ったりします。M&Aなどもこの類でしょう。

② 戦略2:コストを減らす

こちらも当然ですが、コストを減らすことが重要です。気を付けないといけないのが、固定費である人件費に目をつけられた場合です。この場合、ボーナスカットやリストラ、希望退職募集などが発生してしまいます。複数社による事業統合でも、設備の統合に加えてリストラが発生する場合があります。また、大企業の事業の切り離しは給与体系が変わることを意味します。そうでなければ切り離す意味がありません。新聞等でこのようなキーワードを見つけたら少し注意しましょう。ちなみに新聞を読んでいると、明らかに苦しい業界や会社に気づくことが容易になります。

3. 給料にこれから影響しそうな社会の変化とは。

これからの40年間は変化のスピードがより速くなる時代と言われています。ここでは給料にこれから影響しそうな注目の社会の3つの変化について考えます。

3-1. グローバル化

グローバル化によって、世界がよりひとつに近づき、国際分業によってサプライチェインなども変化しています。グローバル化は私たちの給料にどのように影響するのでしょうか。「10年後に食える仕事 食えない仕事」という本[出典5]では、「グローバル化時代の職業マップ」として以下のように分類しています。日本人メリット(日本で生まれ育っていないと身につけづらい特殊性)とスキルタイプ(知識集約的/技能集約的)の2軸によって、①重力の世界、②無国籍ジャングル、③ジャパンプレミアム、④グローカルの4つに分類しています。

 

詳しくは書籍に譲りますが、日本人としての特殊なメリットが小さく、かつ技能集約的な職業は、どんどんグローバルな最低給与の水準に落ちていく可能性があるということです。10年後に給料を維持するためには、図の①重力の世界から脱出しなければならないということになります。

図2 グローバル化時代の職業マップ[出典5]

 

3-2. 新技術の台頭

米デューク大学のキャシー・デビッドソン教授が「2011年度に米国の小学校に入学した子供の65%は、大学卒業時に今は存在しない職業に就くだろう」と述べたこと[出典6]、英オックスフォード大学の研究である「雇用の将来」で「今後20年のIT化の影響で、米国における702ある職業のうち、およそ半分が失われる可能性がある」とあることは有名ですよね[出典7]。「無くならない仕事に就こう」などと言うつもりはありませんし、できないと思いますが、新しい技術・産業に常にアンテナを張っておく必要はあるでしょう。

3-3. 働き方の変化

最近ニュースになったヤフーの働き方改革では、「週休3日制」や「新卒一括採用から通年採用への移行」「オフィスの座席を固定しないフリーアドレス制」などが話題になりました[出典8]。終身雇用・年功序列、週5日フルタイム勤務といったこれまでの働き方は、今後変わっていくかもしれません。働き方の変化にも注目していくことが重要でしょう。

 

給料を重視するのであれば、目に見える数字のみにとらわれるのではなく、マクロな視点も持つことをおすすめします。給料はどこから発生しているのか、これからも給料を払う力が会社にありそうか、社会の大きな変化についていけるか、といったことも頭の片隅に置いておきましょう。

 

出典:

[1] 財務省:法人実効税率の国際比較http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/084.htm(2016.11.10閲覧)

[2] 日本経済新聞(2015.4.19)配当性向 日本は欧米企業より低くhttp://www.nikkei.com/article/DGXLZO85868270Z10C15A4NN1000/

[3] 渡辺孝:経営者のための経営分析手法~生産性分析~http://www.juki.co.jp/jm/jmn/apinfo/colum_anlysmng/sub06.html(2016.11.10閲覧)

[4] 日本経済新聞(2015.7.1)日本人の総人口、27万人減少 出生数も過去最小http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS01H4C_R00C15A7I00000/

[5] 渡邉正裕:10年後に食える仕事 食えない仕事、東洋経済新報社、2012

[6] The New York Times
http://opinionator.blogs.nytimes.com/2011/08/07/education-needs-a-digital-age-upgrade/?_php=true&_type=blogs&_r=0(2016.11.10閲覧)

[7] Carl B. Frey et al.(2013) The Future of Employment: How Susceptible are Jobs to Computerisation?

http://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/downloads/academic/The_Future_of_Employment.pdf

[8] 日本経済新聞(2016.9.24)週休3日制、ヤフーが導入検討 働き方を多様にhttp://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ24H1P_U6A920C1TJC000/